矯正装置の
選び方
HOW TO CHOOSE
矯正装置にはいろいろ種類がありますが、装置によって到達可能な治療レベルには大きな差がありますので、選んだ装置によって治療結果がかなり違ったものになることにご注意ください。一見、歯並びがそろったように見えても、そのレベルには差があります。
マルチブラケット法
(エッジワイズ法)
世界中で最もよく使われている万能型の矯正装置であらゆる症例に対応でき、熟練すれば歯を最も短期間でかなり自由に大きく移動させることが可能な装置です。ただし、技術を身につけるには、大学の矯正歯科などで少なくとも数年間の修業を積む必要があります。
まず、歯一個一個に金属のブラケット(金具)を接着剤でくっつけます。歯は削りません。金具には断面が長方形となる細長い溝が刻んであり、そこに細い針金を通します。針金が外れないように、小さな輪ゴムまたはさらに細い針金で縛ります。歯をゴムで引っ張りますと、歯は針金にそって、あまり傾かずに滑るように動いていきます。この装置ならでは特徴は、歯根を移動させることができることです。(取り外し可能な装置では歯根の移動は困難です。)

審美ブラケット

マルチブラケット法の金具を、ステンレス製ではなく透明なセラミック製にすると、マルチブラケットのいいところはそのままに、見た目を美しくできます。唯一、歯の根に強いトルク(ひねり)を加える必要がある症例には向きません。また、プラスティック製のものは安価なのですが、柔らかいので、太めの針金を使うと歯の動きが悪くなります。溝の部分にステンレスのフレームをはめ込んだタイプもありますが、見た目は少し悪くなります。
舌側矯正

1980年ころに日本で考えられた矯正法で、金具を歯の表側でなく裏側につけます。矯正装置が外からは見えないことが、マルチブラケットに比べて唯一最大のメリットです。ただし、問題点がたくさんあるのであまり普及しておらず、特殊な治療法といえます。
金具が歯の裏側についているので、歯を内側に引っ込めようとすると、表側に金具がついている場合より、金具が取れやすくなります。よってやや弱めの力で引っ張ることになります。このように歯を内側に動かすには不利なので、出歯の治療など歯を内側に入れる症例には向いていません。さらに、かみ合わせが深いと歯の裏側の金具が下の歯にぶつかり易くなります。
表側に金具をつけるマルチブラケット法と同じくらいのレベルの治療結果を得ようとすると、治療期間はかなり長くなるでしょう。どちらかというと、歯を抜かずに歯列を外側に広げるような治療が適応症と考えます。
費用が高額で治療期間が長引き易く、また歯みがきがしにくいので虫歯や歯周病のリスクが高い、口臭が強くなる、金具が舌に当たって痛いなど様々な問題がありますので決してお勧めできません。
マウスピース(インビザライン、アライナーなど)

自分で取り外しができる装置ですが、治療結果の到達可能レベルはかなり低くなります。その一番の理由は、この装置では、歯を傾けることはできるのですが、歯の根を移動させることがほとんど不可能だからです。二番目の理由は、効果が出るのは装置をはめているときだけで、外している間は効果がないか歯が元の位置に戻っていくことです。
この装置を作るのには、まず歯医者さんが型を取ります。特に矯正歯科の専門的な知識や経験は必要としませんので、一般歯科の先生で大丈夫です。それを歯科技工所もしくは専門の業者さんへ送ると、現在の歯型から目標とする歯型をコンピューターで製作し、それをもとに柔らかい合成樹脂でできたマウスピースを作って、送り返してくれます。患者さんは、それを自分ではめるだけです。
現在の歯型と目標とする歯型の違いが大きいと、マウスピースをうまくはめることができないので効果がありません。その場合は、コンピューターで途中経過の歯型を何個か作り、それぞれマウスピースを作ります。患者さんは複数のマウスピースを順番にはめていくことになります。
マウスピースによって歯にはどのような力が加わるのというと、粘土板に木の杭を打ち、それに袋をかぶせて引っ張るのと似ています。木の杭は粘土板と平行には移動せず、徐々に傾斜していきます。傾斜が一定以上になると、杭から袋がすっぽり抜けてしまい杭はそれ以上動かなくなります。マウスピースでは歯を傾けることはできますが歯根の移動はほぼ不可能なので、歯根を動かす必要がない症例に向いています。
- 前歯に隙間があるので、歯を内側に傾斜させて隙間を閉じたい場合。
- 逆に前歯に軽度の凸凹があるので、歯を外側に押し出してそろえたい場合。
歯を抜いて治療する場合、マウスピース単独の治療では抜いたところに隙間が残りますので、矯正歯科医ならばマルチブラケット法、または舌側矯正で隙間を閉じることもできますが、それなら最初からマルチブラケット法を選んだ方が良いのではと考えてしまいます。
歯を抜く治療、
抜かない治療

歯を抜く治療と抜かない治療どちらがいいでしょうか?
当然、抜かない治療がいいに決まっています。ところが、実際の矯正治療では小臼歯を4本または2本抜いて治療する場合が多くなります。実は、歯を抜かないで矯正した場合と抜いて治療した場合では治療結果に大きな違いがあります。凸凹の歯ならびを抜かないで治療する場合は、歯列を外側に広げて歯を揃えます。当然ながら前歯は外側に出ますし、前歯のかみ合わせは浅くなりやすいです。逆に歯を抜いて矯正した場合は、歯を抜いた隙間を利用して歯並びをきれいにし、余った隙間は歯を内側に入れて閉じます。前歯は内側に入りますし、かみ合わせは深くなりやすいです。
以上から、口元が少し引っ込んでいて多少前歯が今より前に出ても構わない場合は、歯を抜かないで矯正し、口元に突出感がある方は歯を抜いて前歯を中に入れるようにした方が、よりきれいな横顔になります。上下の前歯がかみ合わない人も、歯を抜いて矯正すると、かみ合わせが深くなり、前歯で物がかみ切れるようになります。以上のように、歯を抜かないで矯正した場合の治療結果と抜いて治療した場合の治療結果を比べてみて、より良い方を選択します。どちらともいえない場合はまずは抜かないで矯正します。
健康保険で
できる矯正治療

- 唇顎口蓋裂ばかりでなく、頭蓋骨、顎骨などに先天的異常がある場合は手術と矯正治療両方に健康保険が適用されます。
- 顎の骨が大きく変形している顎変形症は、外科手術と矯正治療を併用しますが、高度先進医療として公的な援助がうけられます。
以上の患者さんは東京都文京区御茶ノ水にある東京科学大学をご紹介しています。
コルチコトミーと矯正治療の比較

美容外科などで出歯の治療にコルチコトミーという手術を行う例があります。上顎左右第一小臼歯を抜歯して、上の前歯をひっこめる手術です。矯正治療でも出歯の治療に上顎左右第一小臼歯を抜歯して上の前歯をひっこめる治療をやりますが、治療結果はかなり違ったものなります。
コルチコトミーの場合治療期間は1か月くらいで短いのですが、前歯をほぼ平行に後退させるので、前歯の先端で見て引っ込む量は大体3~4ミリ程度。歯を抜いた場所には手術ののりしろとして1ミリほどの隙間が残ります。
矯正治療は前歯が引っ込むまで約1年半かかりますが、前歯を内側に傾斜させるので前歯の先端で約1センチくらい引っ込み、歯を抜いたと場所に隙間は残りません。時間はかかりますが、矯正治療のほうが審美的、健康増進の両方で優れていると思います。
矯正治療例
ORTHODONTIC TREATMENT CASE八重歯の治療例
歯が重なり合って生えている状態を叢生(そうせい)といいます。八重歯や凸凹の歯並びのことです。歯みがきが非常にしずらい為、虫歯や歯周病になりやすいです。上下左右の第一小臼歯4本抜歯してマルチブラケット装置で約1年半治療しました。
出っ歯の治療例
出っ歯の方は歯がじゃまで口を閉じにくいために、いつも口を開けています。このため、口の中が乾燥し、口の粘膜の細菌に対する抵抗力が弱くなりやすいのです。ですから、出っ歯の方は上の前歯の歯ぐきが赤く腫れています。こういう状態の歯ぐきは歯周病になりやすいので注意が肝心です。上顎左右第一小臼歯2本を抜歯してマルチブラケット装置で約1年半治療しました。
反対咬合の治療例
かんだとき、上の歯が前になるのが正常ですが、逆に下の歯が上より前に出ているかみあわせを反対咬合といいます。反対咬合の方は、前歯が引っかかるために奥歯できちんと食べ物をすりつぶすことができません。反対咬合を治療することにより、あごを正しく動かせるようになり、下あごの前突感や左右のずれも少なくなったり、解消することがあります。
治療例1
骨格に問題のない(機能的)反対咬合です。FKO(夜寝るときはめるプラスティック製のマウスピース)で約半年治療しました。
治療例2
顎の骨に大きな問題がある顎変形症の症例です。マルチブラケット装置と下顎の外科手術(オベゲーザー法)を併用し、保定までの治療期間は約3年でした。